No.15 アツアツの瓦そばと、少し静かな我が家
残業を終えて疲れて帰宅すると、
妻が夕食を温め直して待っていてくれた。
食卓に運ばれてきたのは、瓦そば。
ふんだんなお肉と、ピリッと辛いネギ。
そして急いで作ってくれたのだろう、
少し形の崩れた玉子焼きがどっさりと載っている。
電子レンジでアツアツに熱せられていて、
思わず火傷しそうになるほどだ。
ふと傍らを見ると、
添えられた天つゆが置かれていた。
そのつゆには、
氷がこれでもかとたくさん浮かんでいる。
アツアツのそばと、キンキンに冷えたつゆ。
(……火傷防止の優しさだろうか?)
一瞬で色んな思考が頭を駆け巡る。
よく「結婚は異文化コミュニケーション」なんて言うけれど、
おかげさまで我が家は、毎日が刺激に溢れている。
異文化といえば、
娘が夏休みを利用して短期留学へ旅立った。
最初に娘からその話を聞いたときは、
「えっ、この円安の時期に海外!?」と
妻と思わず顔を見合わせて息を飲んだ。
普段は“異文化”な妻と、
この時ばかりは完璧に“同文化”になった瞬間だった。
一年生で運動部のレギュラーに抜擢されたのに、
夏の強化練習を休んでまで行くという。
親としては「大丈夫か……」と心配してしまうが、
海外にいる娘からは、全く連絡がない。
きっと元気に過ごしているのだろう。
頻繁に連絡を取り合っている妻の元には
逐一情報が入っているらしいのだが……。
それにしても、娘がいない生活はやはり違う。
まず、どうでもいいことで始まる
息子との喧嘩がなくなり、家の中が静かになった。
遅い夕食をとっていても、
私のおかずを奪っていく“小さな盗賊”は現れない。
洗濯物の量は激減した。
洗い物の量も減少した。
洗濯の合間にトランペットの練習をしていても、
「うるさい! 勉強の邪魔!」と怒られることもない。
服や私物、お菓子のゴミがそこら中にポイされないので、
家の中を片付ける負担も激減した。
そういえば、唯一のコミュニケーションだった
「パパぁ〜」と甘い声でお小遣いをねだられることも、
今はない。
遠い海外で、疲れも忘れるほど満喫している娘。
久しぶりに訪れた静かな生活に、
どこか動揺している私。
「素直に寂しいって言えば?」
そんな声が聞こえてきそうだが、
うん、たしかにそうかもしれない。
でもまあ、たまにはお互い、
違った世界を生きるのも悪くないじゃないか。
冷たいつゆにアツアツの麺を潜らせながら、
私はそっと、心の中で娘の無事を祈った。
妻が夕食を温め直して待っていてくれた。
食卓に運ばれてきたのは、瓦そば。
ふんだんなお肉と、ピリッと辛いネギ。
そして急いで作ってくれたのだろう、
少し形の崩れた玉子焼きがどっさりと載っている。
電子レンジでアツアツに熱せられていて、
思わず火傷しそうになるほどだ。
ふと傍らを見ると、
添えられた天つゆが置かれていた。
そのつゆには、
氷がこれでもかとたくさん浮かんでいる。
アツアツのそばと、キンキンに冷えたつゆ。
(……火傷防止の優しさだろうか?)
一瞬で色んな思考が頭を駆け巡る。
よく「結婚は異文化コミュニケーション」なんて言うけれど、
おかげさまで我が家は、毎日が刺激に溢れている。
異文化といえば、
娘が夏休みを利用して短期留学へ旅立った。
最初に娘からその話を聞いたときは、
「えっ、この円安の時期に海外!?」と
妻と思わず顔を見合わせて息を飲んだ。
普段は“異文化”な妻と、
この時ばかりは完璧に“同文化”になった瞬間だった。
一年生で運動部のレギュラーに抜擢されたのに、
夏の強化練習を休んでまで行くという。
親としては「大丈夫か……」と心配してしまうが、
海外にいる娘からは、全く連絡がない。
きっと元気に過ごしているのだろう。
頻繁に連絡を取り合っている妻の元には
逐一情報が入っているらしいのだが……。
それにしても、娘がいない生活はやはり違う。
まず、どうでもいいことで始まる
息子との喧嘩がなくなり、家の中が静かになった。
遅い夕食をとっていても、
私のおかずを奪っていく“小さな盗賊”は現れない。
洗濯物の量は激減した。
洗い物の量も減少した。
洗濯の合間にトランペットの練習をしていても、
「うるさい! 勉強の邪魔!」と怒られることもない。
服や私物、お菓子のゴミがそこら中にポイされないので、
家の中を片付ける負担も激減した。
そういえば、唯一のコミュニケーションだった
「パパぁ〜」と甘い声でお小遣いをねだられることも、
今はない。
遠い海外で、疲れも忘れるほど満喫している娘。
久しぶりに訪れた静かな生活に、
どこか動揺している私。
「素直に寂しいって言えば?」
そんな声が聞こえてきそうだが、
うん、たしかにそうかもしれない。
でもまあ、たまにはお互い、
違った世界を生きるのも悪くないじゃないか。
冷たいつゆにアツアツの麺を潜らせながら、
私はそっと、心の中で娘の無事を祈った。
No.16 つぶれたロールパンと、小さな朝
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